管理職インタビューVol.3「その人らしい生活の“手助け”がしたい」

「みんなでお家で暮らそう」をスローガンに

 私が考える事務長の仕事は「患者を守る」「地域を守る」「職員の健康と生活を守る」「社会保障を守る」の4つです。私はこれを常に心にしのばせて仕事をしています。
 あきしま相互病院では2014年から訪問診療をスタートさせ、「みんなでお家にかえろう」というスローガンを掲げてきました。今年度は、それをさらに発展させた「みんなでお家で暮らそう」を合言葉にして職員一同、頑張っています。
イラスト 在宅医療の患者さんは9人から始まり、現在114人に。お家に帰ったあとの暮らしも、より良いものにしていきたいという思いから「みんなでお家で暮らそう」のスローガンが生まれました。
 お家でやりたいことは、患者さんによって一人ひとり違います。趣味を楽しみたい、家族とのふれあいの時間、孫の世話…などなど。それぞれの思いに寄り添いながら、サポートしていきたいですね。
 当院は認知症ケアや患者さんの在宅復帰支援にも力を入れています。これらは、高齢社会を迎えた日本で病院が果たす役割の1つだと考えています。

スムーズな在宅復帰に向けて

イラスト 在宅復帰支援では、リハビリのスタッフなどが事前に患者さんの自宅に伺い、「家屋調査」をしています。手すりや段差の有無、工事が必要であればケアマネさんに情報を伝えます。入院中から在宅での暮らしを視野に入れたサポートが、いまは求められています。
 患者さんがお家で自分らしい暮らしを送るためには、病棟と在宅医療の連携も重要です。患者情報をリアルに引き継ぐことも大切ですし、病棟看護師から在宅看護師へ、またその逆のパターンなど、病棟看護師さんが在宅医療を知る研修も重視しています。

日経ヘルスの取材が励みに

日経ヘルスケア表紙 医療業界の有名雑誌、『日経ヘルスケア』2017年7月号(333号)に、あきしま相互病院が取り上げられました。在宅医療に熱心に取り組む病院を探していたとのことで、これまでの奮闘が実った結果だと、職員自身もおおいに励まされました。
 診療報酬上の問題もあって、慢性期の患者さんを受け入れる療養病床を持つ病院は、「赤字ですよね?」とよく言われます。しかし、超高齢社会を迎え、慢性期病院への期待は今後ますます高まるでしょう。質の高い、差額ベッド料を取らない、経営の安定した慢性期病院が求められているといえます。そうした病院なしに、日本の医療は良くならないのではないでしょうか。
 また、『日経ヘルスケア』の記事で、連携病院の看護師さんから「あきしま相互病院の看護師は入院時から患者の状態を知っているので、連携・相談がしやすい」とコメントしていただけたのは、とてもうれしかったですね。当院の医療内容と経営活動が、組織内外から注目されつつあり、張り合いを感じています。

地域の人々に支えられながら

 当院の自慢のひとつは、なんといっても庭。毎週水曜日、患者さんや住民のみなさんでつくる三多摩健康友の会の庭づくりボランティア「山ほうしの会」が毎週来てくれます。おかげで庭はとても美しいし、野菜も収穫できます。庭の隣には昭島市と立川市の公園もありますし、病院をとりまく緑は癒し効果抜群です。
 通所リハでは朗読ボランティアのみなさんも来てくれます。プロ並みの臨場感ですよ。このほか、踊りやうたごえなど、患者さんのレクリエーションに一役買ってくれています。
 地域の方々との交流はこれからも大切にしていきたい。住民のみなさんとともに歩んでいく病院でありたいと思っています。

東京都を動かした
人工呼吸器自家発電装置の助成金

 2016年秋にあきしま相互病院が担当する在宅で人工呼吸器を使用する患者さん宅に自家発電機がないことに当院の看護師が気付きました。
 ALS(筋萎縮性側索硬化症)など、在宅で人工呼吸器を使う患者さんにとって、自家発電装置は命綱です。しかし東京都では、訪問診療がはじまり1年以上経過すると補助金が受けられませんでした。大きな震災は、いつ起きるかわかりません。停電してしまった時、患者さんはどうすればいいのか。
発電機 改善に向けて、職員が何度も自治体に「何とかならないか」と問い合わせました。最終的に昨年10月に都議会で取り上げてもらったところ、遡って補助金が適用されることになりました。訪問診療の中で気づいた問題を、こうした形で改善することができて、本当に良かったと思います。職員の結束も強まったと感じています。
 ただし、難病以外の患者さんには認められていないので、難病以外の患者さんにも適用範囲を広げていく取り組みを進めています。

働き続けられる楽しい職場にしたい

 当院ではこの間、安定した経営を背景に人員も増やしています。職員の意識を高めるため、パート職員も含めた全職員会議を開催していますが、参加率は90%以上。病院の方針が職員一人ひとりに比較的浸透していると思っています。
 病院と職場の課題は、常に明確にしておくべきです。病院が掲げる「旗」が明確かどうかは、職員のモチベーションにとっても重要だと考えています。
 職員が定着してくれるよう、楽しい職場づくりもめざしています。
 やりがいのある仕事であれば、苦労が多くても楽しいし、仲間との交流や刺激、励まし合いも大切ですね。そういう意味では、健生会グループは働きやすい職場だと思います。
 私たちの実践している医療や介護の理念を理解していただき、1つのことをやり遂げられるねばり強い人に、「チームあきしま」の一員になってほしいですね。