たそがれ泣き

 日が陰り少し暗くなったころ、目覚めると突き上げるようなさみしさに襲われ、しゃくり上げて泣いた。両養子だった父の実家が5キロほどのところにあり、祝いだか法事だかによく連れて行ってくれた。いっぱい遊んで昼寝をしてしまう。母の実家に行ったときにはそんな記憶はないので、母がいなくて泣いたのだろう。腹の底から湧き上がるどうしようもない気持ちで泣いた。まだ自分をよく分からない頃のことだ。心の深いところの懐かしい感情だ。
 すっかり暗くなりお開きになると、父は田んぼが続く道を、「マムシに食われるとあかんで」と言って負ぶってくれた。小柄な人だったが、がっしりした肩は暖かく、少し汗のにおいがした。学校に上がる前のことだ。

宮地秀彰

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