いのちの水と土

 古里の土と水に育てられたと思う。今ごろは畑に向かう細い道には霜が降り、野芝や雑草を輪郭に輝いている。幼いころ美しいと思った。四季折々、畑で育った野菜を収穫し、父は井戸水で土を落とし台所に用意し、母は調理した。庭には山椒、紫蘇、茗荷もあった。山菜採りにも出かけた。父と母は農事ごよみを見、種を農協で買い、まいた。一年と毎日の自然の時間のなかで育てられたと、あらためて思う。里を出、土とは長く離れてしまったが、親たちの土とのいとなみ、暮らしを思い出すことはできる。
 多摩の私たちが飲む水に使われる井戸水から、発がん性や低出生体重などの健康に影響する有機フッ素化合物(PFAS)が広く見つかっている。私たち住民による自主的な血液検査が始まった。

宮地秀彰

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