泣き声。ありがとう

 「赤ちゃんの泣き声。懐かしいです」診察室に入るなり、明るい声で語りかけられた。小学生の時から喘息で通い、今は社会人になった息子さんの代理で来られた。赤ちゃんの気分、母親の気持ちを思い、これまでのわが子との経験を思い出されたようだ。
 帝王切開が必要など、高いリスクのお産では小児科医は同席する。祈るような気持ちで、最初の泣き声を待つ。小さく弱くても「ありがとう」。勇気づけられ、必要な処置を行う。母の胎内で、これから生きていく力を育んで生まれてくる。必要なことは的確なサポートだけだ。「おたんじょう、おめでとうございます」。
 どこかで、泣き声と困っている親子に会ったら、力になれることはありますかと声をかけたい。たとえ笑顔だけでもとどけたい。

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