家族になる

河瀬直美監督の映画「朝が来る」。朝斗は生まれてすぐ特別養子縁組により、待ち望む養父母に迎えられ、すこやかに育っていく。同時に養父母は朝斗が物心つくころから、真実告知により産んでくれた母がいることを伝える。その14歳の母は自分一人生きることに精いっぱいであるが、わが子に会うかなわぬ思いを抱き続けている。
血のつながりのない夫婦と子が親子となる。苦難を乗り越え、愛情を深め認め合い家族になっていく。朝斗の心に寄り添う、生みの親と養父母がいたから彼があり、彼がいたから生みの親をふくめた、新たな関係と居場所、展開を予感させる。家族とは、必ずしも叶うわけではない人と人との関係とは何だろう。映像と音楽が美しく印象的だった。

宮地秀彰

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