テーマ3 新型コロナウイルスとのたたかい

その1:感染者受け入れの決断と体制の確立

 国内で初の新型コロナウイルス(COVID-19)感染者が確認されたのは、2020年1月16日。立川相互病院ではその直後の1月23日から帰国者・接触者外来を設置し、感染患者の入院受け入れ、PCR検査実施など、地域の中核病院としてコロナ対策の最前線に立ち続けた。

感染者受け入れの決断への思い

 「いのちや健康にかかわるその時代の社会問題」にとりくむ民医連の医療機関として、また感染症診療協力医療機関でもあり、受け入れる決断は難しくはありませんでした。しかし、職員の中には不安の広がりもありました。感染症対策を徹底し院内感染を起こしていないことや、患者さんを受け入れ無事に退院していただくことができたことを自信にしながら進んできたと思います。
(2020年7月「コロナ対応の6か月を振り返って」のコメントより)

救急入口横に急きょ設けられた発熱患者用テント
感染防護具の取り扱いを確認する職員

手探りでの院内体制の確立

 情報が乏しい中、感染管理部門が中心となり院内の感染対策体制を確立していく。2020年2月19日には感染者受け入れのための陰圧室6床を設置、即日、感染疑い患者の初入院。2月末には、院内・法人内に医師・看護師・事務職員などをメンバーとした「新型コロナ対策会議」を立ち上げ、決定事項は全職員に周知することを徹底する。職員の不安に対して、「正確な情報を隠さずに進める」という病院側の姿勢が、このコロナ対応を進めていく中で大きな意味をもった。

2020年4月中旬のコロナ専用病床。感染患者が急増し、緊迫した状況が続いた

感染対策資材が足りない!地域からの協力が広がる

 感染が広がり始めた2月頃から全国的にマスクの流通が途絶える。医療現場でも1枚のマスクを数日間使用せざるをえないという異常事態に。医療現場の困窮を知った、地域住民や友の会、企業から3万枚以上のマスクなどが届けられた。4月中旬には院内のマスク不足も解消されていく。
 また、コロナ感染拡大による受診抑制や病床制限などにより、病院収益は一気に赤字化していく。健生会は7月、医療危機を乗り越えるために、地域の皆様に「寄付」「協同基金」への出資をお願いし、延べ1,300人を超える方から総額5千万円の寄付とたくさんの励ましの言葉をいただく。混乱を極め続けた医療現場に、地域の方々からの厚意は貴重な明るい光となった。

コロナで苦境の立川市の飲食店の皆さんより、応援のお菓子が届けられる
地域から届いた手作りマスク

感染拡大初期の立川相互病院の動き(赤字は一般的な動向)

2020年
1月 中国・武漢で原因不明の肺炎の集団感染を確認
 23日 帰国者・接触者外来を設置
 24日 都内で初めての新型コロナウイルス感染者確認
2月
 19日 新型コロナウイルス感染者受け入れのための6床の陰圧室を用意。COVID-19疑い患者の初入院
 26日 都内在住者で初の死者
 28日 新型コロナ対策会議(院内)設置
3月
 11日 WHOがパンデミック宣言
 18日 職員への検温実施通達。面会制限、入院患者の外出泊制限開始
 23日 小池知事、都民への自粛要請
4月
 1日 COVID-19感染患者の入院受け入れを開始
 2日 新型コロナ外来開設。面会禁止、病院入口での検温開始
 7日 全国一斉緊急事態宣言発令
 8日 HCU病棟16床をコロナ専用病棟に変更
 10日 救急外来を一時閉鎖(1週間後に再開)
 25日 緊急事態宣言全面解除
7月より 一般病棟(20床)を「コロナ疑い、コロナ陽性患者専用病床」とし、新型コロナウイルス感染症重要医療機関としての運用を開始

その2:病床逼迫、自宅療養者の増加…、コロナに翻弄される社会

 新型コロナウイルスはより強い感染力へと変異を続け、2021年にはデルタ株、2022年にはオミクロン株が流行し、感染者数は爆発的に増えていく。病床逼迫、保健所の業務過多、自宅療養者の増加など、さまざまな事態を生じさせながら3年を超える長期間のたたかいとなった。

孤立を深めた自宅療養者の日常を支える

訪問から戻るたびに持ち物をすべてアルコール消毒する訪問看護師。時間はかかるが、患者宅に感染を持ち込まないための大切な作業

 新型コロナウイルス感染拡大は、訪問看護・介護の現場にも大きな影響を与えた。感染を恐れて訪問サービスの利用中止が生じる一方で、感染拡大で面会制限となった病院からの早期退院者が訪問看護を利用するケースも急増。また一部の介護施設ではデイサービスなどの利用制限も行われ、行き場を失う利用者が生じていく。
 外出自粛により「日常」が失われたことで、認知症の進行、歩行などの身体能力の低下などのケースが増加。コロナ禍で孤立を深めた自宅療養者の日常を、感染対策に大きく心を砕きながら、訪問看護師やホームヘルパーが支えていった。

家族に会いたい! ─「オンライン面会」の実施

会話ができない70代の患者さん。家族や愛犬が映し出されると、涙を流された

 健生会でもすべての入院病棟で、新型コロナウイルス感染防止のために面会が原則禁止となり、入院物品や洗濯物の受け渡しも職員を介しての対応となった。
 長期入院者が多いあきしま相互病院では2021年1月から、病室と自宅をつなぐ「オンライン面会」を実施。「家族や友人と会えない」寂しさに耐えてきた患者さんたちは、笑顔で、時に涙を流しながら、モニター越しに家族との再会を果たした。

診療所での「発熱外来」の設置

ふれあいクリニック入口での発熱・体調確認

 立川相互ふれあいクリニックでは2020年4月初旬から、入口ですべての患者さんの発熱・体調を職員が確認する体制へと変更する。37℃以上の発熱があれば、一般患者とは別の動線となる「発熱外来」へと誘導。
 病院での感染を恐れ一般患者の「受診控え」が生じる中で、一般患者・コロナ感染を疑う患者の双方が安心して受診できる体制を、法人内の各診療所が地道に試行錯誤しながら確立していった。

誰一人置き去りにしない「ワクチン接種」を

 2021年4月から、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。しかし、予約方法が自治体によって異なり、「何度電話してもつながらない」「ネットでの手続き方法がわからない」など、予約できない高齢者が続出する。健生会は、三多摩健康友の会とともに「ワクチン相談」を設置し、友の会の各支部では予約サポートの活動が開始された。
 府中支部では、友の会と府中診療所との話し合いを重ね、5月末に全会員に府中診療所での接種可能なことも含め案内を送付。多くの返信があり、円滑な接種の予約・実施につながっていった。

友の会府中支部。活動を担った友の会のメンバーと山城看護師長(左)

●友の会の活動とは何なのか? いつも考えていましたが、ワクチン予約こそ命を守る活動だと実感し行いました。パソコンが使えない・電話がつながらない・家族がいないなどの方々に喜ばれました。家族を含め会員が直接事務所に訪ねてきたことや、その後の悩みごとの相談など、結びつきが強くなったことが収穫です。
(三多摩健康友の会府中支部・金子ゆりさん)

感染者爆発の中で、診療所の果たした役割

 2022年8月の第7波では、東京都内で日に2万~3万人規模の感染者数となり、各診療所には発熱患者が殺到。医療従事者にも感染が広がり、人手不足により診療体制を縮小せざるをえない中、診療所では発熱患者受け入れのための体制維持に奮闘する。
 大南ファミリークリニックでは、増え続ける自宅療養者への健康観察事業(武蔵村山市医師会主導)に参加。
 自院管理の患者含め、ピーク時には1日に80人超のコロナ陽性の自宅療養患者への電話連絡に追われた。

●健生会の事業所では、コロナかどうか心配な方を、発熱外来での受け入れという形で地域要望に応えることができました。大南ファミリークリニックは午前外来では医師体制が3人の日もあり、発熱患者を1日10~15人受け入れました。しかし午前の診療終了時や、午後休診時の問い合わせは断らざるをえなかった。健生会の他の診療所でも、発熱患者に対応する医師体制がないところでは、完全予約制となり、多くの問い合わせを断らざるをえませんでした。職員にとってこれほど苦しいことはなかった、そう聞いています。
(大南ファミリークリニック・叶谷毅事務長)

2012-2022