「まず診る、援助する、何とかする」の実践
私たちは医療人として、患者さんの医学的な問題だけでなく、生活の背景にある社会問題にも目を向けようとしている。
2019年、健生会が地域住民に行ったアンケート調査では、「国保料が高く、支払いが困難」という多くの声が寄せられた(立川市在住モデルケース試算で、国保料は家計収入の約11%)。保険料滞納による無保険状態、あるいは保険料支払いで精一杯で受診費捻出困難による受診抑制など、「高すぎる国保料」が適正な医療へのアクセスを妨げている現実が見えてきた。同年8月、健生会は立川市に対し、高すぎる国民健康保険料の引き下げや、減免制度の周知を求める要請書を提出した。
立川相互ふれあいクリニックでは、毎週1回、「困難事例・気になる患者さんミーティング」(通称「気に患ミーティング」)が行われる。持ち寄るのは、認知症が進んできた高齢世帯、経済的事情による受診中断ケースなど、職員が気になった患者さんの情報。全部門で情報共有し、問題解決をめざす。チームの知恵と行動力で、一歩踏み込んだ対応が可能となり、具体的な成果につながっている。
コロナ禍で取り組んだ「フードボランティア」もこのミーティングの成果の1つ。子どもを抱え食費にも困窮する患者さんをサポートしたいと、職員が自宅にある食料を持ち寄ったのがきっかけとなりスタートした。立川市の社会福祉協会からの協力も得て、より多くの患者さんへの食糧提供につながっている。

週に1回の「気になる患者ミーテイング」。全部門が関わることで、院内全体のアンテナが高くなった
クリスマスソングが流れる2018年12月24日、立川相互病院前で第25回の相談村が開催された。「サービス残業を強いられる」など切実な声が寄せられた
「生活相談、労働相談などお困りごとに、専門家が無料で相談に乗ります!」──立川駅周辺で「立川なんでも相談村」無料街頭相談会を開催し、健生会職員はじめ、弁護士、税理士などボランティアが、地域の方々からの相談にのっている。2010年12月~2019年12月で30回開催し、相談件数416件・生活保護申請45件である(2020年よりコロナで休止中)。活用できる制度の紹介や、さらに詳しく相談するための窓口などへつなげてきた。コロナ拡大以降は、「コロナ災害を乗り越えるいのちとくらしの電話相談会」として活動を継続している。
2022年「地域診断」のとりくみでは、立川市内の、生活困窮者の支援団体を通じて、口腔ケアの重要性を伝えた
「無料低額診療事業」とは、経済的困窮者が無料または低額で受診できるしくみで、健生会では2011年より3事業所(立川相互病院、ふれあいクリニック、相互歯科)で実施している。その利用者数はコロナ禍で急増。コロナ禍での減収のケース、無保険の若年者・外国人など、より幅広い層からの相談へと変化している。
すべての人に受診機会を保障する大切な事業であり、実施事業所の拡大や、地域への周知を今後も推進していくことが求められる。
立川市西砂地域を取り上げた2019年のとりくみ。地域のさまざまな団体にインタビューした
立川相互病院では、新入職員研修の一環として、地域を取り巻く課題をフィールドワークする「地域診断」にとりくんでいる。多職種がチームとなり、地域の方々にアンケートやインタビューを通じてテーマを掘り下げ、医療者として「社会的処方」を考えてみるというもの。
これまでに、立川市内の医療機関の比較的少ない地域を取り上げ、その要因と対処を考えたチーム、入院患者さんの口腔環境と予後の関連を入口に「口の中の健康から見える格差社会」を掘り下げたチームなど、地域を詳しく知ることで医療者としての役割をリアルに捉えるとりくみになっている。
2012-2022