祝 100回記念インタビュー! いま、変化する社会・環境 の中で考える健康:暮らしの健康教室

 連載スタートから約9年、「暮らしの健康教室」は本号で100回を迎えます。今回は特別編として、筆者の福島早織さんに読者の皆さんから寄せられた質問に答えていただきながら、毎回の執筆に込める思いを聞きました。

― 今回、読者の皆さんから多く寄せられたのが「災害級の酷暑など、昨今の激しい気候変動にどう対処したらいいのか?」という質問でした。
猛暑の記録を毎年塗り替えていく状況の中で、「環境の変化が健康問題の大きなリスクになっている」ことを多くの方が実感されている表れだと思います。猛暑による影響は、熱中症以外にもさまざまなダメージが指摘され始めています。
英国の医学雑誌「ランセット」の2024年の報告では、暑さが長引くことで、心臓や呼吸器、腎臓の持病をもつ人へ深刻な影響をもたらすとされています。人体が暑さに対処するために行う、皮膚に近い血管を広げること、汗を多くかくことが、心臓や腎臓に大きな負担を与えます。また、夜間も続く高温によって睡眠の質が下がり、高血圧の悪化、認知機能の低下、うつ病の増加なども指摘されています。別の研究では、猛暑は高齢者の老化を早める可能性も示されています。今後、研究が進めば、もっとさまざまな影響が明らかになっていくでしょう。
「暮らしの健康教室」でも熱中症についてたびたび取り上げ、水分摂取やバランスの良い食事、無理のない範囲での運動など、自分の健康を守り・整えるための情報を発信してきました。今、その重要性と併せて、地球の健康を守る「プラネタリーヘルス」にも目を向ける段階に達しているように強く感じています。
これは2015年に提唱された、「地球の健康」と「人間の健康」は相互に関係しているという考え方です。地球の健康が失われれば、人間や社会の健康も失われる。地球環境悪化の原因の多くは、人間の社会活動や暮らしの中にあります。温暖化もその1つの表れです。今その影響の切実さを、猛暑というかたちで私たちはかつてなく実感しているのではないでしょうか。
本紙3月号でも福島の原発問題を取り上げましたが、今の電気や物を大量に消費する生活の中で、本当にこの電力が必要だろうか?この部分節電できるのでは?と見直してみる、ごみを減らすことを心がける…など。地球の健康を守るという視点で身の回りの生活を見つめ直すことが、ひいては私たちの健康につながっていくのだと思います。
ナイチンゲールも「療養環境を整えないと、人は健康にならない」と言っています。それは当時、部屋の掃除という文脈だったかもしれないけれど、今それを地球全体に広げてみる。大切なことは、昔から変わっていないのかもしれません。

― 質問からもう1つ。今、職場にも家庭にも余裕がなく、とにかく頑張ることを求められがちです。「周囲の人または自分自身をねぎらうコツ」がありますか?
まずは相手の良いところを褒める!それは、どんなに小さなことでも相手の良いところを見つける練習から始まります。褒めるのが苦手、そんなこと言わずともわかるでしょうという方は、第三者が相手を褒めていた言葉を伝えてみる。「あの人が、あなたのこんなところを褒めていたよ!」と。自分も褒めてみようかなという気持ちになっていくはずです。
自分自身をねぎらう、褒めるというのはなかなか難しいです。例えば自分を、もう一人の自分として眺めてみたとき、どう褒めるかなと考えてみるのもいいかもしれません。逆に何かうまくいかなかったときには、「こういう結果になってしまったけれど、いやいや頑張ったよ、私」と自分に声をかけてみる。だんだんその言葉を受け入れられるようになっていくと思います。

― 保健師としてこのシリーズを執筆されています。そこにはどんな視点があるのでしょうか?
例えば看護師と保健師では、役割が少し異なります。看護師は、病気や怪我をしている人に手当をする。保健師は直接手当をするというよりも、その人が自分自身でより健康に生活できるようにするための助言や、環境を整える役割です。その助言は必ずしもすぐに必要ではないかもしれません。でも、いざ必要となったとき、そういえばこんな情報があったと思い出して取り入れていただけるように情報を発信し続けることが重要と感じています。だから、この「暮らしの健康教室」で広く発信することは、保健師の役割そのものであると思っています。

― 福島さん自身の健康法を1つ教えてください。
「何もしない」こともする、受け入れることです。「1日これだけ歩く」「筋トレをする」などの目標は大事です。でもできない日だってある。できなかった自分を責めずに、今日は「何もしない」をする日にする。1週間や1か月で目標の50~60%できれば良しとする。そういう自分の緩さも受け入れて、前向きに続けていけることが大切だと考えています。

― 最後に読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
皆さんに読んでいただいているから、100回まで続けることができました、ありがとうございます。これからも日常の小さな疑問に答えながら、皆さんの健康づくりへの後押しになるような話題を書き続けていきます。(2025年9月5日於 立川相互病院)

読者の皆さんからのファンレター!

  • 楽しみながら、知識と生活のアドバイスになります。友人にコピーしてあげて喜ばれています。
  • その時々の状況に応じて、素人では得られない健康情報を教えてくださいまして、役に立っています。ありがとうの気持ち、感謝でいっぱいです。
  • 楽しみに読ませて頂いております。暑い日が続く中、毎日の食事に苦労してました。夏バテ予防の食材の記事は、食欲増進にとても役に立ってます。
  • 最初に読むのは「立川相互病院の風景」。そして次は「暮らしの健康教室」です。「身体を温めて、元気な冬に」、わかりやすくて好きです。血行を改善する生活習慣を心がけよう。

◇「健康のいずみ」10月号(2025年10月5日/第622号)より
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