心は目に見えない、だけど心遣いは目に見える

 私が介護をやるうえで常に大切にしている言葉です。この病院の患者さんはほとんどが高齢者で、認知症を患っている人も多くいます。認知症という病気のとらえ方は人それぞれです。そもそも病気ではなく老化現象の一部であると言う人や、「人」が年齢を重ねるにつれ、迫りくる死への恐怖を忘れるためだという人もいます。

 介護をするということは認知症と向き合うことです。認知症は人を変えてしまいます。残念なことですが認知症によって今まで通りの家族という関係が変わってしまうこともあります。人・場所・時間・言葉など、その人をその人たらしめる様々なことを忘れたり、あるいは混同したりしてしまいます。周りの人は、自分の顔も名前も覚えてないなんて・・・・とショックを受けてしまうかもしれません。しかし、一番ショックなのは忘れてしまった本人なのではないでしょうか。 もし、自分が全く覚えのない人から「私は娘の○○よ、忘れちゃったの?」と言われたら・・・・。しかも、自分が今どこにいるのか、なぜここにいるのかもわからないのです。きっととても怖いと思います。
 人の心は目に見えません。だけどどんなに物を忘れても、どんなに言葉が出なくても、心を込めて行う介護は必ずその人に温もりのような安心感を与えることができます。きっとそれが「真心」というものでしょう。認知症を患っている人は常に混乱と戦っています。そんな中で、自分が関わったほんの一瞬でも安心していただくことができたらと思いながら日々介護をしています。
2階病棟 介護福祉士