病院近くの残堀川は桜の名所です。4月7日、満開の桜の下で病棟患者様のお花見を行いました。外出する機会が少ない患者様方には近くまでの外出でしたが、病院に戻られてから桜がきれいだった、こんな色の桜があったなどとスタッフに教えてくれて、季節を感じる素敵な1日でした。
私は1年目の新人看護師です。日々患者様とかかわっていく中で、人として大切なことを多く学ばせていただいています。入院している患者様はこれまでに様々な経験をされ、困難を乗り越え今を生きていらっしゃいます。私にとって人生の大先輩です。その方々が色々な話をしてくださったり、中には詩を作ってくださった方もいらっしゃいました。
ある患者様は「断じて行えば鬼神も之を避く」という言葉を教えてくださいました。断固たる決意をもって行動すれば、何者もそれを妨げることはできないという例えで、もし人生の中で本当に進みたい道があったなら簡単にあきらめてはいけない、という話をしてくださいました。この患者様はこの思いの通り、やりたいことがあるからと毎日リハビリに励んでいらっしゃいます。
残堀川の桜
またある患者様は「あなたは泥沼に咲くハイビスカス、そよ風に吹かれながら咲いている」と、一部ですが詩を作ってくださいました。人生は楽しいことばかりではなく、辛いことや悲しいことなど困難がたくさんある、でもその困難に勇敢に立ち向かい乗り越え、そして情熱をもって仕事に取組み今キラキラと輝いているという思いが込められています。「その情熱をいつまでも忘れないように」とお言葉をいただきました。
様々な経験をしてきたからこその思いの詰まったあたたかい言葉で、新人の私にとってとてもうれしく心に響きました。この言葉たちを胸に毎日看護をしています。私たち医療スタッフは、患者様の人生の中の貴重な時間を共に過ごしています。患者様から多くのことを教えていただき日々学びながら少しでも患者様のお役に立てるように、貴重な時間がその人らしい充実した時間となるように、そしてご家族の思いに応えられるように、これからも一生懸命、看護に取り組んでいきたいと思います。
私が介護をやるうえで常に大切にしている言葉です。この病院の患者さんはほとんどが高齢者で、認知症を患っている人も多くいます。認知症という病気のとらえ方は人それぞれです。そもそも病気ではなく老化現象の一部であると言う人や、「人」が年齢を重ねるにつれ、迫りくる死への恐怖を忘れるためだという人もいます。
介護をするということは認知症と向き合うことです。認知症は人を変えてしまいます。残念なことですが認知症によって今まで通りの家族という関係が変わってしまうこともあります。人・場所・時間・言葉など、その人をその人たらしめる様々なことを忘れたり、あるいは混同したりしてしまいます。周りの人は、自分の顔も名前も覚えてないなんて・・・・とショックを受けてしまうかもしれません。しかし、一番ショックなのは忘れてしまった本人なのではないでしょうか。 もし、自分が全く覚えのない人から「私は娘の○○よ、忘れちゃったの?」と言われたら・・・・。しかも、自分が今どこにいるのか、なぜここにいるのかもわからないのです。きっととても怖いと思います。
人の心は目に見えません。だけどどんなに物を忘れても、どんなに言葉が出なくても、心を込めて行う介護は必ずその人に温もりのような安心感を与えることができます。きっとそれが「真心」というものでしょう。認知症を患っている人は常に混乱と戦っています。そんな中で、自分が関わったほんの一瞬でも安心していただくことができたらと思いながら日々介護をしています。
2階病棟 介護福祉士
当院にはリハビリをして自宅に帰る方がたくさんいらっしゃいます。その中で私が担当させていただいたある患者様に学ばせていただいたことがあります。
その患者様は自宅では車いす生活を送っていましたが、入院時はほとんどの時間をベッド上で過ごされていました。奥様はほとんど毎日お見舞いにいらっしゃって、お二人時間を大切にされていました。
ご本人からは「パソコンをやりたい」、奥様からは「トイレに行ってくれれば・・・」という希望が聞かれていました。進行性の難病を持った方だったことあり入院前までの状態まで回復することは難しかったため福祉用具や介護保険サービスの利用などを提案し環境を整えることを中心に退院をめざしました。
入院から2か月後、デッド上でもパソコンが使える環境を整え、ポータブルトイレを使用することでトイレでの排泄が可能となり、無事に自宅へ退院することができました。退院する際に「ありがとう、次は歩いてくるね」と笑顔でおっしゃってくださったことを今も覚えています。
ほとんどがベッド上での生活になっても笑顔で退院していったこの患者様から”自宅へ帰る”といっても患者様、ご家族によって望んでいる生活は違うのだということを改めて学びました。リハビリスタッフとして自宅へ帰るため、望んでいる生活を送るためには何が必要かを常に考えながら、患者様に寄り添っていきたいと思います。 理学療法士
リハビリスタッフによる退院前の家屋調査の様子。
当院に入院される患者様の中には今まで治療が順調でなく、回復をあきらめかけている方がしばしばみられます。
ある方は、脳神経の難病で大規模病院や専門医を転々とされ、そのたびに薬が次々に増えてしまい治療への不信感で服薬を拒否されていて、気持ちも若干すさんでいられる様子でした。 おおむね30分ほどこの間の経過をうかがったところ、今後の生活がどうなるのかを心配し、『未来への希望につながる道筋』が見えないことへの強い不安をお持ちだと感じました。
そこで病気の原因と仕組み、薬をしっかり使えば今までより楽に動けること、今の段階できちんと治療すれば自宅に帰ることも可能になることをじっくりとお伝えしました。
その後、患者様は内容を整理して単純になった薬をきちんと使用され、リハビリにも励まれ、ついにご自宅へ退院されました。
長く治療を続けるには、なりより『未来への希望につながる道筋』が必要です。現代医療が失ってしまったかもしれない『患者様と時間をかけて向き合い、気持ちを前向きに変えていくこと』の一翼をになう誇りを胸に、今日も当院の薬剤師は患者様のところへ足を運んでいます。